「酒は控えめなのに脂肪肝?」男性に急増するMASLDとは

健康診断で「肝機能の数値が高め」と出たものの、痛くもないからとそのまま放置していませんか?
成人の3人に1人が該当する脂肪肝は、代謝が落ちて内臓脂肪がつきやすくなる40代前後の男性に最も多く見られます。 肝臓は自覚症状を出さない「沈黙の臓器」ですが、日常の生活習慣を少し見直すだけで改善する可能性があります。 今回は気になる検査数値の正しい見方と、忙しい毎日でも無理なく続けられる改善のコツを分かりやすく解説します。

肝臓の役割と「肝機能」とは

肝臓は、成人で約1.0〜1.5kgと体内最大の臓器であり、生命活動を維持するための化学工場のような役割を担っています。
主な役割は以下の3点になります。

1. 代謝とエネルギーの貯蔵:
食事から吸収した糖質・脂質・タンパク質を体内で利用できる形に変換し、グリコーゲンなどとして蓄え、必要に応じてエネルギーとして全身へ供給します。

2. 有害物質の解毒・排泄:
アルコールやアンモニア、体内に取り込まれた老廃物や薬物などを分解・無毒化し、尿や胆汁中に排泄します。

3. 胆汁の生成・分泌:
脂肪の消化・吸収を助ける消化液である「胆汁」を毎日生成しています。

肝臓は非常に高い再生力と予備能力を持つため、多少の障害を受けても痛みなどはありません。自覚症状が現れにくく「沈黙の臓器」と呼ばれるため、健康診断などの血液検査で「肝機能の異常」を早期に発見することが極めて重要です。


 脂肪肝(MASLD)とは

脂肪肝とは、消費エネルギーを上回る過剰なエネルギー摂取などにより、病理組織学的に肝細胞の5%以上に中性脂肪が蓄積した状態を指します。

これまで、飲酒をあまりしない人に起こる脂肪肝は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていましたが、2024年に国際的な基準および日本肝臓学会・日本消化器病学会などの合意に基づき、「MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患 / Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」という新しい名称・概念へと改定されました。

MASLDは、肥満や脂質異常症、2型糖尿病、高血圧といった代謝異常(メタボリックシンドロームの因子)を背景に発症する脂肪肝を包括しています。

 

MASLDとMASHの違い:

MASLD:代謝異常に伴う脂肪肝の総称

MASH(代謝異常関連脂肪肝炎 / 旧称:NASH):MASLDの中でも、脂肪蓄積にとどまらず肝細胞の壊死・炎症や線維化を伴う病態

 

放置するリスク:

脂肪肝やMASHには自覚症状がほとんどありませんが、慢性的な炎症が持続すると肝線維化(肝臓が硬くなる現象)が進行し、肝硬変や肝不全、肝細胞がんへと移行するリスクが高まります。さらに、全身の動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす危険性も高まります。


なぜ男性・中高年に多いのか

国内における有病率は成人の約9〜30%に上り、患者数は少なくとも1,000万人以上と推計されています。特に男性や中高年層に多く見られる理由は以下の通りです。

40代男性における肥満割合の高さ: 
国民健康・栄養調査によると、肥満の割合は女性よりも男性が高く、特に40代男性が最も高いことが示されています。内臓脂肪型肥満は肝臓への脂肪蓄積と直結します。

基礎代謝の低下と生活習慣の変化:
加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)や基礎代謝の低下に対し、デスクワークによる運動不足、会食や晩酌の習慣、高カロリー・高脂質な食事内容が重なりやすい年代です。

ホルモン環境の違い:
女性は閉経前まで女性ホルモン(エストロゲン)の保護作用によって内臓脂肪や肝臓への脂肪沈着が抑制されますが、女性と比べると保護されにくく、30代以降から内臓脂肪や肝脂肪の蓄積リスクが顕著になります。

肝機能検査の数値の見方

健康診断で測定される代表的な3つの酵素は、肝細胞の損傷度合いや原因を推測する指標となります。

検査項目主な存在場所高値になる主な原因と特徴
ALT (GPT)主に肝細胞肝細胞が破壊されると血液中に漏出。脂肪肝ではALTがASTよりも高くなる傾向。
AST (GOT)肝細胞のほか、心筋や骨格筋肝臓だけでなく心臓や筋肉の障害でも上昇。アルコール性肝障害や、肝疾患が進行して線維化(肝硬変)が進むとこの数値が高くなる。
γ-GTP (γ-GT)肝臓の胆管上皮や肝細胞アルコール摂取や薬剤の刺激、胆汁の流れが悪くなると鋭敏に上昇。お酒の飲み過ぎや脂肪肝の重要な指標となる。

判定の目安:
・ALTやASTが30U/Lを超え始めると肝細胞に何らかの負担がかかっているサインとなります。
・「ALT > AST」かつ「γ-GTP高値」である場合、過剰な栄養摂取や内臓脂肪に伴うMASLDが強く疑われます。


セルフチェック

脂肪肝セルフチェック

脂肪肝セルフチェック

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改善のための生活習慣

食事

脂肪肝は、生活習慣を見直すことで改善が期待できます。

糖質(特に果糖・単糖類)と脂質の制限:
ジュースやエナジードリンクに含まれる果糖や白米・麺類のドカ食いは、肝臓で急速に中性脂肪になってしまう。

野菜を先に食べることと食物繊維の摂取:
野菜、キノコ、海藻類などの食物繊維を最初に食べることで、糖や脂質の吸収速度を穏やかにする。

夜遅い時間の食事を避ける:
就寝前のエネルギー摂取は消費されず、そのまま肝臓へ中性脂肪として蓄積されやすい。夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませることがおすすめ。

運動

ウォーキング、速歩、水泳などの有酸素運動を1回30分・週3〜5日(週150分程度)行うことで、肝臓内の脂肪燃焼が促進されます。

ほかにも方法はあり、レジスタンス運動(筋トレ)です。
スクワットなど大腿部の筋肉を刺激する筋トレを週2〜3日取り入れます。筋肉量を維持・向上させることで基礎代謝が上がります。

体重管理

日本消化器病学会・日本肝臓学会の「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)」では、肥満を伴う脂肪性肝疾患では現在の体重から7〜10%の減量を達成することで、肝臓の脂肪化だけでなく炎症や線維化の改善が期待できるとされています。

ただし、極端な絶食などによる急激な体重減少は、かえって筋肉を分解し、「低栄養性脂肪肝」を悪化させる恐れがあります。1ヶ月に0.5〜1kg程度のペースで緩やかに落とすのが理想です。

飲酒

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、純アルコール量(g)を把握することが推奨されています。計算式は以下のとおりです。

摂取量(mL) × アルコール度数(%) ÷ 100 × 0.8

(例:ビール500mL(5%)= 約20g)

脂肪肝の改善を目指す場合、飲酒は1日あたり純アルコール20g以下に抑え、週に2日以上の休肝日を設けることが望まれます。MASLDと診断されている場合でも、アルコールは肝線維化を加速させるため、可能な限りの減酒・断酒が推奨されます。

睡眠・ストレス

睡眠不足(6時間未満)は自律神経の乱れや過食ホルモン(グレリン)の増加を招きます。
さらに、いびきや夜間の無呼吸は、低酸素状態を引き起こして肝臓に酸化ストレスを与え、脂肪肝の炎症(MASH)を悪化させることが知られています。気になる場合は受診をおすすめします。


サプリ・健康食品との付き合い方

肝機能サポートを謳うサプリメント(ウコン、オルニチン、タウリン、ビタミンEなど)が市販されていますが、以下の点に留意が必要です。

1. 基本は生活習慣の改善: 
サプリメントはあくまで栄養補助であり、それだけで改善することは難しいでしょう。
「サプリを飲んでいるから暴飲暴食しても安心」という認識は逆効果になります。

2. 薬物性肝障害のリスク:
体質に合わない成分や、海外製サプリメントの過剰摂取によって、かえって肝臓に負担をかけて肝機能障害(薬物性肝障害)を引き起こすケースがあります。
服用中の医薬品がある場合や肝機能値が高い場合は、利用前に主治医やかかりつけ薬剤師に相談してください。

病院を受診する目安

健診で「要精密検査」「要再検査」と判定された場合は、自覚症状がなくても放置せず、医療機関を受診してください。腹部超音波(エコー)検査や血液マーカーによって、脂肪肝の進行度や線維化の有無を安全に確認できます。

受診すべき診療科は、消化器内科、または肝臓内科の受診が推奨されます。まずは一般内科(かかりつけ医)で相談し、必要に応じて専門医への紹介状を発行してもらいましょう。

警戒すべき症状として、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)、強い全身倦怠感、腹水の貯留、むくみ、食欲不振などがあります。これらの症状が現れた場合は、肝機能が著しく低下している危険サインであるため、直ちに医療機関を受診してください。


最後に

肝臓は病気が進行しても自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」です。健康診断で数値の異常を指摘された時に生活習慣を見直してから始めてみてください。

「まだ症状がないから大丈夫」と過信せず、まずは夕食の糖質を少し控えたり、休肝日を設けたりするなど、日常の小さな工夫から肝臓をいたわる生活をスタートさせましょう。
ただし、健診で「要再検査」「要精密検査」と判定された場合は、生活習慣の見直しと並行して、早めに医療機関を受診してください。

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参考:

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